About
展覧会について
ムーミンの食卓とコンヴィヴィアル展
ー 食べること、共に生きること ー
「宴会」や「ごちそう」「共生」を意味するConvivial
(コンヴィヴィアル)。
食べること、共に生きることは、つながっているのだ。
ほかにも、コンヴィヴィアルには、雰囲気が陽気
だったり、友好的なこと、
心地よかったりすること、という意味もある。
「ムーミン」の世界には、季節を通して、
いろんな食べものが登場し、
それを取り巻く環境やフィーリングは、まさに、
「コンヴィヴィアル」であふれている。
多様な価値観が隣あってせめぎあう
現代の社会にあって、
各々の「個」をしっかりと保っているのになんとなく
共生しているムーミン谷の仲間たちの
生き方と「コンヴィヴィアル」という概念に、
これからの時代を生きていくための示唆を見いだせる
かもしれない。
四季折々の自然の恵みの食べ物を中心とした
ムーミン谷の豊かな食文化と、
和気あいあいとくつろぐムーミン谷の
仲間たちの姿を通して、
心がぽっと温かくなる「コンヴィヴィアル」
な気持ちを感じられる
ムーミンバレーパークのオリジナルの展覧会。
Comment
監修者からのコメント
冨原眞弓
聖心女子大学名誉教授
ー 日本語監修 ー
今回の企画展のキーワード「コンヴィヴィアル」は、ムーミンバレーパークの
コンテンツ・ディレクターのKとの会話から生まれました。だいたい、こんな感じ。
食べものをテーマにした展示を企画したいんです。
でも、作品中にあまり凝ったものは出てきませんよね。ヤンソンさんは食べることにこだわりがないから…。
そうなんです。意外と素朴なものが多くて。ジャムとかパンケーキとか。
ムーミンママは料理というか、家事全般において、わりと手抜き派ですよね。
食器はまとめて雨の日に外に出して洗う、いや、ざっと洗い流すだけというか。
コミックスの「ふしぎなごっこ遊び」のスグリのジャムづくりなんか、完全に遊んでますよね。
ミーサが怒っちゃいましたね。食べもので遊ぶなんて、不謹慎だって。
それどころか、ベリーだって、りんごだって、マメルクだって、みんながいい気分に
なって分かちあうきっかけになるなら、本望ってことじゃないですか。
生命はこうやって脈々とつづいていくんです。
こういう浮き浮きした感じ、いいですよね。食べたり飲んだりしながら…。
それだ、「コンヴィヴィアル!」、これで行きましょう!
それから何度も計画を練り直しました。おりおりに英訳監修者Aと互いの文章を読み、
日本語と英語にずれが生じていないかをチェックしました。
でも、互いが互いの直訳ではないところがミソです。
日本語は日本語らしく、英語は英語らしく。よかったら読みくらべてみてください。
安達まみ
聖心女子大学現代教養学部
英語文化コミュニケーション学科教授
ー 英語監修 ー
企画展のテーマは、「食を介してともに在る」、さらには「食を介して不在をしみじみ感じる」ことです。
『たのしいムーミン一家』のパーティーで、ムーミンママの焼いた素朴なパンケーキは、クロヒョウだけを供として生きてきた飛行おにの孤独を和らげてくれました。
自分をこわがらず、当たり前のように、あつあつのパンケーキをふるまってくれる相手に、はじめて逢ったのです。
うれしくなって、みんなの願いごとを聞いてやります。
ハイライトは、その場におらず、ひとりで旅をするスナフキンに、山盛りのごちそうが載ったテーブルを届けてというムーミントロールの願いです。産学連携授業の一環として企画展の日本語テクストを英訳した聖心女子大学の学生たちも、あるときは対面、あるときはリモートと、互いのあいだで絆を紡いでいったのだと思います。